第68期 第14号 転科実習

2022年6月23日

日時

令和4年5月6日(金)~5月30日(月)(主計科)

令和4年6月17日(金)~6月23日(木)

場所  呉~サンフランシスコ~ホノルル~呉
天候  ー

この長く、厳しい遠洋航海の実習で実習生が1番楽しみにしているといっても過言ではない実習が始まりました。それは「転科実習」です。

この期間だけは他科の仕事を経験することができます。

実習生が転科実習を楽しみにしている理由として

  1. 普段経験することのできない他科の実習を行える。
  2. 自分の科の怖い教官から逃れられる。

などがあります。

主計科では実習生4名ずつが、主計科乗組員と一緒に食事を作ります。ここではデザートを「つまみ食い」ができることも実習生からの人気が高い理由の1つです。

「航海科・機関科・通信科」への転科実習では、3~4人のチームを組み、それぞれの科を巡ります。自分の専攻する科の仕事を他科の実習生へ説明するのですが、理解が曖昧だと教えることができません。つまり各人の力量が試される実習にもなります。

この実習の終わりには「お前の科は大変だな、すごいな。」とお互いを称賛し合うようになりました。

ちなみに、各科には厳しい教官が目を光らせているので、やっぱり怖い教官からは逃れられません。

主計科実習を経験した航海科実習生のコメント

まだ皆が就寝中の早朝から、乗組員、実習生合わせて約80人分の朝食を作りました。朝食を作り終えた時にはかなりの体力を消耗していました。特に80人分のお米を炊き、実習生と乗組員の炊飯器にお米を移す作業は想像以上に大変な作業でした。お米から発せられる熱気に汗が止まらず、メガネが熱でくもり、サウナに入っていると勘違いするほどでした。

朝食作りが終わると、すぐに昼食の準備にかかりました。昼食を作り終えたころにはヘトヘトになっていましたが、自分が作った昼食を美味しそうに食べる仲間を見て、とてもやりがいを感じることができ、頑張って良かったと思いました。

今回の主計科実習を経験して、船内での食事作りの大変さを知ることができました。毎日大変な作業をしている主計科の方たちにより感謝して、毎日完食しようと思います。

(航海科 櫻田 渉)

お米の炊きあがりを確認する航海科実習生
お米の炊きあがりを確認する航海科実習生

機関科を経験した航海科実習生のコメント

私は機関科の転科実習において、機関室内に異状がないか探る見回り、ボイラーなどの機器の発停を経験することができました。機関室内は危険なモーターの回転部や高温な箇所が多々あるため、そのような場所を認識・把握し、安全管理を徹底する必要があると学びました。さらに、機関室内は35℃を超えるほど暑く、過酷な状況で頑張っている機関科の方々の我慢強さに驚かされました。

船を操船する航海科にとって、船内の機械について把握すること、機関科がどのような作業を行っているのかを理解することは非常に重要となります。今回の実習で機関科から教わったことは忘れないように、また、現場に出ても積極的に他科のことを理解できるように取り組みたいと思います。

(航海科 増山 愛)

機関科としてバルブを閉める航海科実習生
機関科としてバルブを閉める航海科実習生

通信科を経験した機関科実習生のコメント

私は通信科の仕事はモノクロ印刷された天気図の気象情報を見やすくするために色塗りをして、色鮮やかにすることだと思っていましたが、そんなことはありませんでした。私の所属する機関科とは違い、電波という目には見えないものに関する知識は、そう簡単に習得できるものではありませんでした。電波の種類によっては地球の裏側まで届くものもあり、入ってくる情報のほとんどが英語で、これを一人で処理する通信科のインテリ感がとてもカッコいいと思いました。

航海科と通信科は通信機器を使用する機会が機関科に比べて多く、自分の通信に関する知識が他科の実習生に比べて少ないことを実感しました。現場には通信士が乗っていない船も多く、私自身が通信機器を扱うことも多くなります。通信は海難情報を送受信する重要なツールです。通信科実習生が作成してくれた転科実習のテキストを見て、現場でも困らないように少しずつ知識を手に入れたいと思います。転科実習終わりの頃には、指導してくれた通信科実習生が、天気図だけではなく、私の通信科に対するイメージも色鮮やかにしてくれました。

(機関科 森 海斗)

通信科として天気図に色を塗る機関科実習生
通信科として天気図に色を塗る機関科実習生

遠洋航海が始まり、航海科実習生が「六分儀」という太陽と星の高度を測る機器を使用し実習を行っている姿を見て、何か武器を扱っているみたいでカッコいいという印象がありました。そこで転科実習が始まり、私も六分儀を使用する機会を得ました。使い方を教えてもらう中で、ある航海科実習生から、六分儀の鏡を用いて太陽を反射させ、鏡の角度を変化させることで、鏡に映った太陽の像の高度を徐々に下げていくことを、「太陽をゆっくり落としていく」という表現で言われました。最初は、「いや、太陽は自分で落とせないでしょ」と冗談かと思っていましたが、使っているうちになんとか私も「太陽を落とす」ことができ、航海科になったような気分を得ることができました。

残りの実習期間も少なくなってきていますが、このような感動をもう一度得られるように日々精進していきたいと思います。

(通信科 山下 克季)

六分儀で太陽の高度を測定する通信科実習生
六分儀で太陽の高度を測定する通信科実習生

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