第69期 第3号 三都巡り(呉~東京~名古屋)

2023年1月27日

日時

 令和5年1月20日(金)~1月27日(金)

場所  東京湾、名古屋港
天候  ー

大寒の厳しい寒さが身に染みる季節となりました。練習船こじまでは、海上保安大学校本科第4学年(第69期)航海科実習生による東京、名古屋、神戸の三都に寄港する乗船実習(通称:三都巡り)を実施しています。船舶交通が輻輳する海域や海上交通安全法で定める航路を多く航行するため、交通の難所である狭い水道や航路通航時には、当直士の職務としていつも以上に適切な見張りの実践が重要となります。寄港地では、その土地ならではの業務に関する講話を拝聴したり、休養日には上陸して各地の風土を感じたり、様々な経験により見識を深める貴重な実習となっています。今回のこじまだよりでは、三都巡りの前半、呉から東京、名古屋間で実施した訓練、航行した航路、業務講話について紹介します。

7メートル型高速警備救難艇(以下「警救艇」という。)揚降操船訓練に参加した実習生のコメント

警救艇は、海難現場等において、小回りが利かない巡視船の代わりに使用する小型の船で、普段はこじまの船上に搭載されています。海難発生時には警救艇を海面に降ろし、救助班を海難現場に派遣するため、警救艇の降下・揚収には迅速さが求められます。一方で、小型とはいえ数トンもある警救艇を降下させるには、安全管理を徹底しなければなりません。そのため、航海当直の合間を縫って実習生間で作業手順や注意事項等を確認し、速さももとめつつも安全かつ確実に作業が行えるように準備を重ねました。訓練当日は、教官方から指摘を受けることもありましたが、以前よりも迅速に艇を降下し、揚収することができました。私たちは現場に赴任した直後から、指揮者として警救艇の揚降作業を行うことになります。このような訓練の機会は現場赴任までに数えるほどしかありません。事前の準備を怠ることなく、実習生間で助け合い、お互いの知識や技能を高め合っていきます。

(航海科 今井 亮佑)

警救艇の舵取り装置の試験を行う実習生
警救艇の舵取り装置の試験を行う実習生

浦賀水道航路の航海当直を担当した実習生のコメント

私たちは東京入港に際し浦賀水道航路を航行しました。そもそも航路とは、船舶の往来が多い海域に設けられた海の道のことです。数多くの船舶が航路に沿って航行することにより船舶交通が整流されるので、こじまも安全に通航することができます。一方、全ての船舶が航路に沿って航行するわけではなく、遊漁船などの小型船は例外となっています。そのため、浦賀水道航路は、一日に平均500隻もの船舶の往来がある日本有数の輻輳海域であることに加え、休日等には多くの遊漁船が集まることから、海上交通の難所となっています。

今回は日曜日だったこともあり、非常に多くの遊漁船が航路内外に見受けられました。遊漁船の間を縫いつつも、航路を出入しようとする船舶を避けるためには、どのような針路が安全であるかを考えることが非常に難しかったです。

浦賀水道航路をはじめとする日本各地の航路は、将来私たち自身が赴任した先で、航行の安全を担っていくことになります。そのためには、乗船実習航海を通じてそれら航路への理解を深め、現状を知らなければなりません。

(航海科 内田 洋都)

レーダーで付近の船舶の動静を把握している様子
レーダーで付近の船舶の動静を把握している様子

中ノ瀬航路の航海当直を担当した実習生のコメント

中ノ瀬航路は、浦賀水道航路に繋がっており、中ノ瀬という浅瀬を避けて、その海域を安全に航行するために設けられています。航路の目印は、海上に直接、道路のように線が引かれているわけではなく、灯浮標(海上の道しるべ)が等間隔に設置され、それらの目印によって区切られた航路を航行することになります。

同航路内では、多くの漁船が操業しており、それらを避けながら航行しなければなりません。そのため、航路からはみ出さないように漁船を避航することが、航行する上で重要となり、実際に操船してみて1番難しかったと感じました。

船舶が輻輳する海域では、当然ながら事故の起こる可能性は高くなります。私たちは、将来、その事故を防止する立場となるため、事故の起こりやすい場所、また、事故の発生原因について理解し、通航船舶に対して注意喚起等を行わなければなりません。今回得られた経験を糧にまずは自船の安全運航を第一に、さらには日本の船舶交通の安全を目指していきます。

(航海科 稲多 蛍輝)

航路内で自船位置を記入する実習生
航路内で自船位置を記入する実習生

業務講話を聴講した実習生のコメント

東京海上保安部次長の講話では、「悪天候の中、救助に行くことは簡単である。救助に行って本当に安全なのかを考えることが大切だ。」、「部下や同僚の提案を聞くだけでなく、良い提案は実際に行動に移すことが大事だ。」という点が印象に深かく残りました。

現在私たちは警救艇の揚降訓練を通じて、技術や知識、指揮統率能力の向上に励んでいます。しかし、これらの能力が足りなければ、海難現場において救助を待っている人の生死を左右し、また部下を危険にさらすことになり得るということにつながります。実体験に基づいた次長の講話から、「現在学んでいることの大切さ」をあらためて痛感しました。

(航海科 一栁 賢伸)

業務講話を聴く実習生
業務講話を聴く実習生

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