第69期 第2号 投揚錨訓練

2023年1月16日

日時

 令和5年1月9日(月)~1月16日(月)

場所  山口県岩国港沖 阿多田島南方海域
天候  ー

あけましておめでとうございます。練習船こじまでは、昨年12月に引き続き、第69期4学年乗船実習が行われており、年初めの実習は航海科実習生による投揚錨訓練から始まりました。本訓練において、実習生全員は操船指揮をはじめとした各役割に就き、他の実習生を統率することを通じて、操船能力をさらに向上させるとともに、チームワークの大切さを体得します。1年後には主任航海士として現場に赴任し、船の操船や作業の指揮・監督を担うこととなる実習生にとって数少ない練習の機会となっています。

操船指揮を担当した実習生のコメント

操船指揮は、事前に水深や物標の見え方などを海図や水路誌等で調べて、予め錨地を選定し、錨地まで船を安全にアプローチさせ錨の投下を指示します。実際に訓練が始まると、私が予定していた錨地付近に他の船舶がいたため、急遽予備として選定していた錨地に変更することになりました。錨地に近づくまでに操船指揮は、船の針路の目安となる山に注目しつつ、横方向にある島の方位から概算した錨地までの距離を読み解き、その距離に応じてプロペラの角度や舵角を調節し、船のスピードや向きを変化させなければなりません。

過去、これ程までに繊細な操船を経験したことがなかったため、船を停止させるまでのイメージトレーニングを事前に何度も行いました。しかし、実際には船体が大きいため、惰性が強く、自身がイメージしたとおりの速力に合わせることができず、操船の難しさを改めて痛感しました。本訓練において、操船指揮を務める機会は一度しかありません。同期同士で、どのように考えて操船したのか、それに対して教官方からどのような指摘を受けたのかなどを共有することが全員のレベル向上に繋がります。多くのことを得るために同期同士で助け合い、今後の実習も全力で取り組んで参ります。

 (航海科 瀬戸口 凜音)

操船の指揮を執る実習生
操船の指揮を執る実習生

船橋配置に当たった実習生のコメント

今回、船橋配置の一つである方位測定を担当しました。錨地まで船を一定の針路で進めるとき、海図を用いて任意の目標の距離と真方位を割り出せば錨地までの距離を算出することができます。私の役割は、予め決めておいた目標が真方位で何度方向に見えるかを逐次報告し船橋内に共有することでした。操船指揮は、私の読み上げた方位によって舵や機関を使用して予定錨地にピンポイントに錨を打つことを目指しているため、端的かつ分かりやすい報告が求められます。そのため、操船指揮が操船しやすいように余裕を持った報告を心掛けました。GPSなどが発達し位置情報を簡単に入手できる時代ですが、最低限の航海計器と目視だけでも高い精度で目的の位置に船を動かすことができるということに感動するとともに、船乗りとして一歩成長できたと実感しています。

 (航海科 二宮 雅生)

船橋で方位測定を行う実習生
船橋で方位測定を行う実習生

前部指揮を担当した実習生のコメント

船は錨を海底に下ろすことで一定の海域に留まることができ、これを錨泊と言います。また、錨泊において重要なことは錨を海底にしっかりと掻かせることです。そのため、操船指揮が思い描く錨地に正確に投錨することができるように、前部作業員には、スムーズな投錨作業が求められます。特に前部指揮者は、操船者の操船意図を汲みつつ、錨の進出速度や作業員の動向に常に気を配り、錨泊に必要な長さの錨鎖を海底まで安全に下ろさなければなりません。

私は、前部指揮者として安全管理を最優先に指揮を執りました。安全な作業を行うためには、次の作業をイメージしていくことが重要であると考え、逐次、操船指揮と情報を共有し合いました。さらに、錨を下ろした後には、錨鎖が極端に緊張して破断することを防ぐために、錨鎖の張り具合を常に確認し、錨を揚げる際には、錨が船体を損傷させないよう船橋との意思疎通を図りました。

本訓練を通じて、作業員との意思疎通のみならず細部にまで注意し、安全管理を行う大切さと、船橋とのコミュニケーションが作業の効率化に影響することを実感しました。今後、海上保安大学校を卒業して主任航海士として現場に赴任すれば、乗組員の安全管理も行わなければなりません。巡視船の安全運航に関する自身の至らない点を理解することができましたので、この経験を生かして今後の乗船実習に取り組み、自己研鑽に努めていく所存です。

 (航海科 光岡 渓人)

前部指揮として作業員に指示する実習生
前部指揮として作業員に指示する実習生

前部指揮者は、錨の揚げ下ろしを確実に行うとともに作業員の安全を確保する重要なポジションです。私は、本訓練を通じて、作業員を負傷させてしまうような危険な作業が潜んでいることが分かりました。具体的な例として、錨が海底を掻く瞬間には錨鎖にとても大きな張力が掛かるため錨鎖が切れるおそれがあり、これによって作業員が負傷する可能性があることや、錨鎖を止めるためのストッパーを掛ける作業では作業員が錨鎖とストッパーとの間に指を挟んでしまうことなどが挙げられます。また、指揮者自身が作業に集中しすぎると、作業全体の動きに注意が行き届かなくなり、見ていないところで作業員を負傷させてしまうかもしれません。この乗船実習を通して、作業中に潜む危険を察知する能力を養っていき、初級幹部として乗組員を守る任務を果たしていきたいです。

 (航海科 山田 達也)

錨鎖を止めるためにストッパーを掛ける実習生
錨鎖を止めるためにストッパーを掛ける実習生

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