第68期 第20号 実習を振り返って

2022年8月9日

私たち第68期実習生47名は、4月から始まった専攻科乗船実習を無事終えることができました。今年度も新型コロナウイルス感染拡大の影響により、世界一周の遠洋航海とはいきませんでしたが、サンフランシスコ、ホノルル、シンガポールと3ヶ所の寄港地を訪れ、また、上陸することができました。この乗船実習を振り返ると安全確認のための国内航海に始まり、海外の海上保安機関との合同訓練及び施設見学、海外勤務されている方からの業務講話、実習生が主体となって企画して行った訓練など多くの出来事、学びがありました。

また、多くの機関トラブルも生じ、発電機が動かない、プロペラが異常振動しているなど運航を危ぶまれることもありました。しかし、そういったトラブルに対し、船長をはじめ乗組員全員が一丸となって考え対処し、無事この乗船実習を行うことができました。この乗船実習で心身の疲労を感じることもありましたが、同期と励ましあうことで乗り切ることができ、同期はかけがえのない財産となりました。

今後は胸を張って12月の現場赴任を迎え、初級幹部として海上保安庁を担い、日本の海を守っていきます。

なお、第68期こじまだよりは本号で終了となります。ご愛読ありがとうございました。

実習生のコメント

4月22日、出港式で整列する私たちの表情はこれから始まる遠洋航海への不安と緊張で少しばかり固くなっていました。それから約3ヶ月。日本沿岸では経験したことのない大時化、数えきれないほどの大量の船舶、船首まで見ることのできない濃霧、太平洋のど真ん中で起きた船体のトラブル、様々な経験を得て、7月14日、私たちは呉に戻ってまいりました。

本実習では、天測による航海、海外の航路、港の通航、ブラックアウト、応急操舵等の緊急事態への対処訓練を行い、終盤ではこれまでの実習の集大成として、実習生1名、乗組員1名の計2名のみで当直を行うという、現場を見据えた実習をしました。避航や変針、増減速の判断、緊急時の対応など様々な判断を自身で行う必要があり、また、自分よりベテランの乗組員に指示を出さなければなりません。この実習では特に主任航海士として課せられる責任の重さ、また、乗組員と良い関係を築くことの大切さを学ぶことができました。

12月には初級幹部として、現場の巡視船艇に配属されることとなりますが、大学校生活4年間及び遠洋航海、専攻科で学んだことを活かして、即戦力として最前線で活躍できるよう、引き続き精進してまいります。

(航海科 矢田 周平)

航海科実習の様子
航海科実習の様子

遠洋航海での実習を通し、将来主任機関士として赴任する上で、機関のトラブルに対する対応力や他科との連携の重要性を感じました。機械にトラブルが生じた際に、その原因は何か、作業員へどのような指示を出すかなど様々なことを考慮しなければなりません。そのためには、機械についての知識をベースに故障原因、優先順位を考え、安全に作業する必要があります。乗船実習は終わりましたが、これからも大学校で知識の習得、対応力を身に付けていきたいです。

また、出入港時やトラブル発生時には他科との連携が大切であると感じました。自分の科ばかりでなく、他科とのバランスを考え、主張することが、船舶の安全運航に繋がると実感しました。視野を広く持ち、船全体で協力し合える環境を創る主任機関士になりたいと思います。

下船する前には機関室内の掃除をしました。その際に約2万マイルを走破し、無事に呉まで連れ帰ってくれた機械への感謝を伝えました。

(機関科 木下 皓太)

機関科実習の様子
機関科実習の様子

本航海では多くの関係者の方々のご尽力により、サンフランシスコ、ホノルル、及びシンガポールに寄港することができましたが、84日間の実習のうち休日は4日間と、私たちにとっては経験したことのない日程でした。したがって、遠洋航海は知識や技能を磨くだけでなく、船という閉鎖空間で実習に取り組むなかで、自分をどのようにコントロールするかということも大切だと学ぶことができました。

これは生活全般だけでなく、通信科の仕事にも同じことがいえます。通信科は船のなかで中継役を担い、全体を見て必要な情報を入手し、選択して、伝えることが求められます。訓練や出入港の際、周りの雰囲気に流されず冷静に俯瞰するために、やはり自分をコントロールすることが必要だと感じました。

この遠洋航海で得たことを基礎として、広い視野と冷静さをもった初級幹部海上保安官となれるよう、これからも精進してまいります。

(通信科 越智 さゆり)

通信科実習の様子
通信科実習の様子

この遠洋航海では、船の運航、防火訓練や落水者の救助訓練など様々な訓練を通じて新たな知識や知見を獲得し、遠洋航海が終わるまでにはその知識資料は膨大なものとなっていました。私たちは12月に全国の巡視船艇に配属されることになりますが、それまで乗船期間が4か月ほど空いてしまいます。この期間のギャップがあってもなお、現場に出れば初級幹部として業務を遂行しなければなりません。この遠洋航海での経験を忘れず現場に活かすことができるように、獲得した膨大な知識を復習するとともに、適切に整理しておく必要があります。今後は国際業務課程という現場赴任前の総仕上げに当たる課程に移り、様々な研修が控えていますが、1つ1つの研修を復習、整理して、万全な状態で現場に臨む所存です。

(航海科 橋本 和樹)

訓練を振り返る実習生の様子
訓練を振り返る実習生の様子

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