第68期 第12号 想定訓練

2022年5月29日

日時

 令和4年5月16日(月)、5月29日(日)

場所  太平洋上
天候  ー

サンフランシスコを出港し、ホノルルに向けて新たな航海が始まりました。航海中は、船舶の運航における実習だけではなく、現場で行う訓練も日々行われています。今回は、消火活動及び救助活動が主体となる防火部署訓練、船舶の破口を塞ぐことで浸水を防止する防水部署訓練を行いました。今回の訓練では、初めて訓練の企画立案から実習生で行い、訓練では船内に火災、浸水が生じたという想定の中で、実習生の間で指揮及び戦術を考える訓練を行いました。

実習生のコメント

私は、総指揮付として防火訓練に参加しました。総指揮付は、総指揮(船長)に集まる情報を整理し的確な状況理解を助けるとともに、必要に応じて助言を行い、判断を助ける役割を担います。

今回、特に意識したことは避難(退船)の時機を逸しないことでした。最も大事なことは人命であるという認識を全員で共有していましたが、退船の命令を出せるのは船長しかいません。適切な消火戦術で立ち向かっても、要救助者が発生し、それを助けに行こうとして火災に巻き込まれるなどの二次災害が発生することがあります。国有財産である巡視船をぎりぎりまで守りながらも、人命は失わない、その瀬戸際で、船長がもつ退船命令の時機を逸せず出すことの難しさを痛感しました。今回の経験をもとに更に防火に対する理解を深め、乗員を守ることができる適切な戦術を実行することができるようになりたいと思います。

(航海科 武田和紀)

消火戦術を考える実習生
消火戦術を考える実習生

今回、私は第一防火班を経験しました。第一防火班は、熱や煙から自分を守るための防火服等を装備し、火災が発生している場所から要救助者を安全な場所へと搬送すること、また消火栓で放水する消火活動を行いました。約1時間の訓練の間で着ていた服は全てが汗を絞れるほどに濡れ、実際ではこれに加えて火災による熱もあると思うと現場の過酷さが容易に想像でき、日頃から体力や気力を錬成しておく事の重要性を改めて感じました。今回学んだ事は多く、非常に有意義な訓練にすることができました。これを無駄にすることなく、普段の生活からいつどこで発生するか分からない火災に対して適切な対応ができるように心構えをしておきたいと思います。

(航海科 谷川慎一郎)

消火活動中の実習生
消火活動中の実習生

私は、訓練内容の企画班として防水部署訓練に参加しました。企画班では、訓練内容の起案を一から行いました。訓練内容を決めるには、どの区画が浸水したらどの機器を使用する必要があるのか等、本船の排水設備について熟知している必要があります。さらに、私たち企画班が与えた想定に対し、実習生がどのような対応をとり得るか予想し、その対応によって、訓練の進み方を何通りも考えなければなりません。しかし、訓練想定にはかなり苦戦し、自身の知識不足を痛感しました。また、本訓練の目的の一つに、防水設備についての知識の向上がありました。その目的を果たすための想定の加減や、実習生たちの導き方についても考えさせられました。

企画班の仕事量は想像以上に多く、これまで私たちが行ってきた訓練の裏側では、私たちのために多くの時間を費やし、考えてくださった方がいたということを実感しました。企画班として参加した者は限られるため、想定内容を決めるのに必要な考え方や、訓練の進め方等、この貴重な経験を全員で共有し、現場における訓練の企画、立案に活かしていきたいと考えます。

(機関科 伊地知小南)

破口の処置を行う実習生  ※作業に伴い海水がかかることからマスクを外しています。
破口の処置を行う実習生  ※作業に伴い海水がかかることからマスクを外しています。

今回、私は第一防水班として訓練に参加しました。今回の想定では第一防水班の任務として、船首付近の区画及び機関室における破口の捜索及び修理を行います。私たちが想定訓練で発見した破口は、機関室内の機器や配管の奥にあったことから発見するまでに時間がかかりました。そのため発見した頃には、膝あたりまで浸水しているという想定を与えられました。訓練における破口修理は実際に水を出して行うため、船尾側にある後部甲板で行いました。実際に水を出すことで破口を押さえる箱が押し戻されたり、うまく支柱が入らずその間にも周囲には水が溜まっていってしまいます。このような訓練を通して水の勢いの怖さを痛感しました。

私たちは、現場に出て班長として判断する状況になった場合に、班員の安全を考えて迅速な対応を取れるようにしなければなりません。浸水の状況に応じた対処方法や退避のタイミングなど、今回の訓練で学んだことを活かして現場で正しい判断ができるようにしていきたいと考えます。

(機関科 中西沙耶)

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