大学校長挨拶

海上保安大学校長 葛西 正記
海上保安大学校長 葛西 正記

「今、このときも、『ただひたすらに』、冷静かつ毅然と、我が国領海の秩序と安全を守る現場がある。今、このときも、『一緒に生きて帰ろう』、全力で命を守る現場がある。」

これは、私たち海上保安大学校の学生・研修生、教職員が常に意識していることです。

尖閣諸島周辺海域における中国海警局に所属する船舶による我が国領海への接近侵入や、大和堆周辺海域における外国漁船による違法操業など、我が国周辺海域の情勢が一層、厳しさを増すとともに、各地で、地震津波や豪雨による災害など大規模な災害が相次いで発生しています。 コロナ禍にあって、激動する社会経済情勢のなかで、ライフラインとしての海上交通の安全、離島からの患者搬送など、守り続けなければならないものがあります。 変化する国際情勢のなか、法の支配に基づく平和で安全な海を実現するために、世界各国の海上保安機関の連帯が求められています。

昭和23年に海上保安庁が発足して以来、「正義仁愛」の精神を実現し続ける海上保安官の姿が、常にそこにあります。そして本校の卒業生・修了生は、幹部海上保安官として、常にその先頭に立ち、国民の期待に応えうる海上保安庁であり続けるべく、船艇・航空機で、部署・管区本部で、霞が関の本庁で、あるいは海外で、かけがえのない役割を担って、それぞれの現場に立ち向かっています。

私たちが目指すのは、こうした厳しい海上保安の現場にリーダーとして立ち向かい、正義仁愛を実現する、人を、仲間を想いやる、そして、その現場を支え、より良きものへと導いていく、幹部海上保安官の姿です。だからこそ、常に「現場」の存在を意識せざるを得ないのです。

海上保安大学校は、海上保安庁幹部職員の養成機関として昭和26年4月に設置され、今年で創立70周年を迎えることになりました。 本校では、幹部海上保安官として必要な「人格の陶冶とリーダーシップの涵養」、「高い教養と見識の修得」、「強靭な気力・体力の育成」を教育方針として、学士の学位取得を前提とした一般大学同等以上の教育内容と、全寮制を基盤とし、練習船による実習、各種の訓練を融合した独自の教育環境のもと、海上保安業務に必要な高度な学術及び技能を有し、これを基盤として幅広い分野で活躍できる人材を育成しており、これまで本科2,740名の卒業生、特修科2,856名の修了生を輩出してきました。

また、世界各国が協調して、様々な国際的課題に取り組むべく、法の支配に基づく海洋秩序の重要性について認識を共有し、相互理解の醸成と交流の促進を図っていくため、平成27年10月に政策研究大学院大学等との連携による修士課程として「海上保安政策プログラム」を開講し、アジア地域の海上保安分野における高度人材育成においても重要な役割を担っています。

本年度からは、四年制一般大学卒業者から採用する初任科の課程が開設され、30名の研修生が新たな仲間に加わり、航海又は機関の専攻に分かれて二年間の教育訓練を行うこととなりました。 さらに、幹部登用研修である特修科、業務に必要な外国語研修、潜水士の養成研修など、本校の充実した教育訓練環境を活かし、様々な階層、職域における専門的な教育訓練も実施しており、向上心あふれる海上保安官たちが研修生として全国の現場からこの地を目指してきます。 風光明媚な瀬戸内に臨むこの呉の地において、地域の方々に温かく見守られながら、学生・研修生が、互いに切磋琢磨し、支えあい、絆を育みながら、それぞれの特質を重ね合わせ、より良き幹部海上保安官の姿を描いていくことを期待しています。

激動の時代、様々な課題に直面する世界、今、我々海上保安官に対する内外からの期待はこれまでにないほど、大きなものとなっています。 海上保安大学校は、今後も、変化する内外の情勢に適確に対応し、教職員一丸となって、明日の海上保安を担い正義仁愛を体現できる人材を育成・輩出すべく、理想とする教育機関の在り方を追求して参ります。

令和3年4月

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