
平成23年3月11日発生しました東北地方太平洋沖地震でお亡くなりになられた方々に対して謹んで哀悼の意を表しますとともに、
被災者の皆様に心からのお見舞いを申し上げます。
海上保安庁では地震発生直後から全国の沿岸海域において巡視船艇・航空機により海上での捜索救助、被害状況調査を行うとともに、
大きな被害を受けた東北地方太平洋側につきましては、全国からこの海域に巡視船艇・測量船・航空機を派遣し、人命救助を最優先と
した捜索救助活動、被災港湾の安全確認、緊急物資輸送などに当たっておりますが、一方で、わが国周辺海域の領海警備、船舶の航行
安全対策など、片時も間隙を作ることの許されない仕事にも対応しております。
このように、1948年(昭和23年)5月1日に国家行政機関として創設された海上保安庁は、海上の安全及び治安の確保を任務とする「海
の総合官庁」として、約12,600名の職員により広く活動しておりますが、この中核的存在をなす幹部職員を養成しているのが、ここ、広島県
呉市に所在する海上保安大学校です。
本校は、海上保安庁が創設された3年後の1951年(昭和26年)4月、海上保安庁の教育機関として設置され、創設以来60年、これまで
に約2,400人の卒業生を送り出してきました。
卒業生は、東京霞ヶ関にある本庁、全国に11ある管区海上保安本部やその下部機関である海上保安部署、航空基地等の中央や地方の組織、
或いは、巡視船艇・航空機などの現場勢力の幹部職員として勤務するほか、国内の関係行政機関や大使館、総領事館などの在外公館、国際
機関等にも勤務するなど、国内外の様々な配置においてその能力を大いに発揮し活躍しています。
本校の学生は、4年間の本科教育を受けた後に初級幹部に任官し、その後約6ヶ月間の専攻科研修、その後半年の実務研修を終えて巡視船等
に初級幹部として配属され、この時から海上保安官としての勤務がスタートし、その後は、様々な配置の経験や各種の研修参加によるスキルアップなど
を経て、幅広い分野において更に上位のポストで勤務することになります。
現場配属と同時にこのような職務環境に対応でき、更に、系統的にステップアップできる人材を育て確保していくことが海上保安庁の責務を的確に行って
いくうえで必要で、この要請に応える教育を担っているのが本校です。
卒業後の勤務体系を踏まえ、本校教育においては、初任幹部としてその任務を確実に遂行するとともに、海上保安庁の責務が国内外情勢の変化とも
相俟って大きく変化する中、将来にわたってこれに的確に対応できる人材を育成していくことを目標としており、これの達成のため、
1.人格の陶冶とリーダーシップの涵養
2.国際性豊かな高い教養と見識の習得
3.強靭な気力・体力の育成
に重点をおいた教育を行っています。
一学年、約45名という少ない学生数に対し約100名の教職員により、一般の大学と共通する自然、人文、社会科学、法学、行政学、語学などの
基礎的教育、海上警察学、海事工学、海上安全学などの専門的教育を行っているほか、4年間の全寮制を基盤とした本校独自の教育環境のもと、
海上保安官、そして幹部職員として真に必要なリーダーシップや精神力をはじめとする人格形成や体力の練成を先輩・後輩との絆、学生・教職員の
信頼関係の中で培っています。
また、練習船「こじま」(総トン数約3,000トン)による乗船実習は、海にかかわる仕事に従事する者として、船を知り、海を識り、海とともに生きる日本の
姿を知り、海の国際性を知るためになくてはならない教育の機会です。
特に太平洋、パナマ運河、大西洋、地中海、スエズ運河、インド洋、マラッカ・シンガポール海峡などを航海し、途中、ニューヨークやシンガポールなどに寄港
して諸外国のコーストガード関係者や外国の方々と交流し、海外の情勢を学び、様々な施設を見学する約100日の遠洋航海は、国際感覚を身に付け、
世界の中の日本の姿を知り、語学力を向上させ、自らを磨くという点で幹部海上保安官にとって必須の航海となっています。
私も様々な勤務経験を通じて国内外に多くの友人、仲間を得ましたし、海外勤務時に現地の方から、「日本周辺海域はありがたい。何かあったときには
海上保安庁がどんなときでも支援してくれる。」との言葉をいただきましたが、この言葉は、私の海上保安官人生における勲章となっています。
「日本は海洋国家である」と言いながら、国民からやや遠い存在となったり、恐れの対象にもなりつつある「海」ですが、「海」は我々の生活とは切っても切れない
関係にあるだけでなく、わが国の存立、発展にも大きく関係しています。
「海」を通じて世界は繋がり、共に生きています。ここ呉の地で海を識り、日本を知り、世界を知り、そして、そのパワーを日本、世界のために活用していく道を
選んでみませんか?
海を舞台とし、海を通じて社会に貢献するこの道」は、君たちが人生をかけ、頑張るに値する十分な価値があります。
君たちが、この道に将来を託し、チャレンジするため、その第一歩となる本校の門をくぐってくれることを心から期待しています。
平成23年4月
瓜生 晴彦(うりゅう はるひこ) |